京・近江の写真 春夏秋冬

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愛読書39「箱根の坂」

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「箱根の坂」は戦国大名のさきがけとなり、戦国時代の口火を切った北条早雲の生涯を描いています。

1982年(昭和57年)6月から1983年(昭和58年)12月まで『読売新聞』誌上で連載されました。

本作で司馬さんは、室町時代後期に国人地侍といった有力農民層の台頭を見抜き、無為徒食なそれまでの

的存在を許さず領主たる守護が直接すべての領民の上に立つ新しい統治機構を構築した北条早雲の業績

を、「日本の社会史において重要な画期であり、革命とよんでもいい」と高く評価しています。

後世後北条氏の祖として高名になる早雲の前半生は、現存する史料が乏しく不明な点が多くそのため、本作で

駿河に下って今川氏の客将として活躍し始めるまでの「伊勢新九郎」としての前半生の大部分は作者の創作

で補われており、その後の後半生も史実の他に伝承などで語り継がれてきた早雲の人物像を取り入れたり、作

中の時代や舞台にまつわる民話や今様などが盛り込まれ、巧みに物語を構成しています。特に、東国へ下る主

人公、義兄妹の禁忌を超えた愛情など、恋愛文学の古典『伊勢物語』からは幾つものモチーフが引用されている

といいます。