ために道中薬を売る店が数軒あったという。そのうちの 1軒である大角家は、胃痛や歯痛などに効くと
いう「和中散」を売る「ぜさいや」の本舗で、慶長16年(1611)、野洲郡の永原御殿に滞在中の家康公
が腹痛を起こして苦しんだ時に、典医が持ち帰った「和中散」を献じたところ、たちまちに治ったとい
う。喜んだ家康公が直々に薬に「和中散」という名を与えたこともあり、その後、「和中散」は広くそ
の名を知られるようになったと伝えられている。江戸時代、大角家は「間の宿」の茶屋本陣をつとめて
いたが、和中散本舗の隣に座敷を増築して、そこに多くの大名が休憩に立ち寄ったという。文政 9年
月には明治天皇も休憩している。
現在の建物は、寛永年間(1624~44)の建物をそのまま残したもので、大きな白壁、贅を尽くした玄関
や欄間、小堀遠州作と伝えられる庭園などが目を引く。店舗のほか、製薬場・台所・居間と玄関及び屋
敷・正門・隠居所などが、国の重要文化財に、そして住宅全体が国の史跡に指定されている。