昔、奈良県の生駒市に住んで居た頃大和郡山市矢田町にある矢田寺(通称あじさい寺)にこの時期よくあじさいを見に行ったことが懐かしく思い出される。矢田寺のあじさいは、本尊様である地蔵にちなんで、昭和40年頃から植え始めたという。あじさいの花びらのひとつひとつが雨に打たれ、さまざまに色が移ろいながら、 仏教の「諸行無常」の心を伝えてくれているという。 また、あじさいの丸い花は、地蔵の手に持っておられる宝珠の形でもある。 あじさいはアジサイ科の植物で、日本の暖地に自生するガクアジサイを母親として、 日本で生まれた園芸品種という。学名の変種名「オタクサ」は、 江戸後期に日本の動植物をヨーロッパに紹介した、長崎出島のオランダ商館の医官シーボルトが、 帰国後、日本滞在中の妻「おたきさん」を偲んでつけた名前と言われている。あじさいは、日本特有の花木であるという。諸外国にその野生種はなく、 西洋あじさいといわれるものは、江戸後期に、 上記のシーボルトなどによって欧州へ送られたものが、改良されたもでであるという。また、梅雨時にさまざまに花の色を変えながら咲き続けるその美しさから、 古来より数々の詩歌にも詠み込まれている。万葉集にもあじさい詠み込んだ歌がある。
あじさいの 八重咲くごとく 八つ代に
いませ我が背子 見つつ偲ばむ
(左大臣 橘諸兄)
言問はぬ 木すらあじさい諸弟らが
練のむらとに 欺かれけり (大友家持)