「竜馬がゆく」は昭和37年6月から同41年5月まで「産経新聞」に連載されました。司馬さんの描く坂本竜
馬の人間像は幕末という暗く重苦しい歴史に青春の輝きと明るさを吹き込みました。
◎私と竜馬がゆく
司馬さんと私との付き合い?は古い。昭和五十年頃東京世田谷の駒沢の社宅に住んでいた時、社宅の近く
の玉川通りにあった古本屋で買い求めた「竜馬がゆく」が司馬さんの作品との始めての出会いであった。
坂本竜馬の自由奔放な生き方に胸を躍らせて一気に読破した。司馬さんの初期の代表的作品であり、司馬
さんの評価を不動のものとしたこの作品の、最後の数行の文章は感動的で素晴らしい。
天に意思がある。
としか、この若者の場合、思えない。
天が、この国の歴史の混乱を収拾するためにこの若者を地上にくだし、
その使命がおわったとき惜しげもなく天へ召しかえした。
この夜、京の天は雨気が満ち、星がない。
しかし、時代は旋回している。若者はその歴史の扉をその手で押し、
そして未来へ押しあけた。
(おわり)