三年坂に出てだらだら坂をしばらく歩いてゆくと石段が目に入る。二年坂の石段よりは勾配が急であり、石段を
樹木がある。枝垂桜である。桜の季節にこの三年坂を登り切った場所から振り返ると、満開の枝垂桜に誰しも目
を瞠ることとなる。その枝垂桜の植わっている料亭が「明保野亭」である。明保野亭は幕末の頃、現在の場所よ
りもう少し北東よりにあったとされ、「明保野亭事件」として有名。
「明保野亭事件」
切腹事件。
にいた武士を制止しようとしたところ、相手が逃げ出したため、取り押えようと追跡のうえ槍で傷を負わせた。直
後に相手が浪士ではなく土佐藩士麻田時太郎(時次郎、とする説もある)と判明したため、その場で解放した。
名乗らなかった麻田にも落ち度があると理解を示していたものの、翌6月11日に麻田が「士道不覚悟」として藩に
ねない事態へと発展したが、結局6月12日に柴司が謝罪の意で切腹し、両者の関係悪化は回避されたという。
三年坂を登り切った右手には年中商売繁盛の七味を売る七味家本舗があり、この日も大勢の観光客が来店
していた。七味家本舗の前の通りは三叉路になっていて、右手の松原通りを下ると東山通りに出、その左手の