京・近江の写真 春夏秋冬

京、近江四季折々の自然の風景とそこに住む人々、祭り、伝統芸能の写真

大田神社のカキツバタ

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社家町から北東に250メートルほど行くと「大田ノ沢のカキツバタ群落」で知られる、やはり上賀茂神社の摂社で

ある大田神社がある。創祀・創建年代は不詳。賀茂県主(かものあがたぬし)が当地に移住する以前から先住

民によって祀られたといわれる。賀茂における最古の神社と伝わり、長寿の信仰がある。御祭神は天鈿女命。

古くは「恩多社(おんたしゃ)」とも呼ばれた。社務記によれば、南北朝時代後期の天授3年(1377年)3月に「大田

拝殿転倒す」とあり、少なくともそれ以前にはすでに造営されていたという。現在の本殿・拝殿はともに江戸時代

初期の寛永5年(1628年)の造替で、いずれも屋根は檜皮葺。本殿は一間社流造。拝殿は割拝殿(建物の真ん

中に通路(土間)がある拝殿)。

参道の脇の「大田ノ沢」では、約2000平方メートルの敷地にカキツバタ約2万5000株が自生しており、「大田ノ沢

カキツバタ群落」として、国の天然記念物に指定されている。平安時代からの名所とされ、鎌倉時代初期の文

治6年(1190年)には、『千載和歌集』の編者で著名な藤原俊成が、紫一色に染まる様子を一図な恋心に例えて

次の歌を詠んだ。

     神山(こうやま)や 大田の沢の かきつばた ふかきたのみは 色にみゆらむ

中期の画家である尾形光琳(1658年-1716年)の『燕子花(かきつばた)図』のモチーフになったとの言い伝えも

ある。

毎年5月上旬から中旬にかけての開花時に、沢一面に濃淡さまざまな紫色の花をつけ、多くの観光客の目を楽

しませる。大田ノ沢は古代に深泥池と同様に沼地であったといわれ、かつて京都盆地が湖であった頃の面影を

残すものであるとされる。

この日、カキツバタの見頃にはまだ早かったが、それでも可憐な紫色が春風にさわやかにそよいでいた。