膜でも覆っているように光がしずかであった。
やがて家並みのあいだに大きな鳥居があった。くぐると、境内の結構や社殿がふしぎなほどに品がよかっ
た。境内に林泉があり、ひとめぐりして鳥居を出た。鳥居の前から家並みのゆきつくはてをながめてみると、む
こうの屋根の上に淡く雪を刷いた岩山のいただきがわずかにのぞいていた。それが奇妙なほど神々しくおもえ
たのは、私の中にも古代人の感覚がねむっていたからに相違ない。もう一度神社に入りなおして社務所の若
ざいます、ということだった。神社は「延喜式」の古社で、建立はそれ以前であり、社殿がここに造営されたのは
白鳳13年(685)であるという。」
この日も参道の古い家並みの向こうに雪を抱いた綿向山が頂をわずかに雲に隠してのぞいていた。