本堂から多宝塔に続く石段を上がってゆくと、珪灰石の巨大な岩盤を上から眺めることができ、改めて毘沙門堂や御影堂も視野に入るその景観の迫力に驚く。多宝塔に向かう石段の登り口には松尾芭蕉の句碑や紫式部供養塔が参拝客を迎えてくれる。多宝塔(国宝)は寺伝では源頼朝が、平治の乱の後に石山寺が兄の源義平を平清盛から匿ってくれたことへのお礼で寄進したと伝わる。墨書より建久5年(1194年)建立とわかる。年代の明らかなものとしては日本最古の多宝塔であるという。多宝塔の東、石山寺の尾根の東の突端部にある月見亭は瀬田川や琵琶湖を望む景勝地にあり、ここから見る月は「近江八景 石山の秋月」の図で有名である。寺伝では保元年間(1156年 - 1158年)に後白河天皇が行幸した際に建立されたのがそもそもの始まりと伝わる。