昨年の台風の影響による激しい雨の中で実施された巡行とは違い、快晴とはいえないがそこそこの天候に恵ま
いよいよ先頭の長刀鉾が見える頃、雑踏警備の警官の不手際もあり、横断しようとしていた人波に視界を阻ま
れぞれ出発して一時間ほど経過していることもあり、やや最初の頃の緊張からは解き放たれた雰囲気がある
が、この長刀鉾だけに乗る生身の稚児と両側に控える禿(かぶろ)、そばに控える大人たちの表情には巡行が
織霜地の二倍織(ふたえおり)表袴(うえのはかま)、鳳凰の丸を浮織した帯状の木綿(ゆう)手繦(だすき)を左肩よ
り右腰に掛ける。これは神に仕える装束の一つ。神の使いとしての稚児は公式には地上を歩かず、屈強な強力
(ごうりき)が稚児を肩に乗せて鉾の乗り降り、移動を行うのである。
小生が河原町御池で群衆にはじき飛ばされるようにして追いやられ、この場所に来たことは結果的には大成功
であったことがすぐにわかった。ちょうど目の前を鉾が通過してゆくときに稚児が身を乗り出して優雅な舞いを披
露してくれたのであった。