井とか、小浜とか、若狭とか、舞鶴とか等々の地名に暗い、寂しい、冷たいなどといった印象を感じた人はわたし
だけではあるまい。特に雪の積もるこの季節、その感がとくに強かった。湖北にマキノというところがある。全国で
地名にカタカナを使用しているのはここだけと聞いたことがあるが、そこにあるスキー場は長い歴史を持ち、京阪
神スキーファンにとっては馴染みの深いスキー場である。学校からスキーバスを連ねて何度かそのスキー場に
行ったことがあるが、湖西を北に向かって走ってゆくと車窓に雪景色が見えるようになり、空も鉛色になって本当
に雪国に行くといった印象が強かった。だが現在は湖北一帯も新しく建替えられた民家が多くなり、それに昔ほ
ど雪が振らなくなった(今年は例外だが)ことやそこに住む人々の人情機微や生活様式も時代の移り変わりとと
もに大きく変わり、湖北もずいぶんと明るい場所となった。北向きのいつも締め切った小部屋の雨戸を開けると
太陽の光が差し込んできて部屋がいっぺんに明るくなったようなものである。しかし今の季節、変わらないことが
一つある。水鳥の楽園ということである。