6メートル,水路幅2.42メートル,煉瓦造,アーチ構造の優れたデザインを持ち,京都を代表する景観の一つとな
現在は周囲の風景にすっかり溶け込んでいて、映画のロケ地としてよく利用されていることもあり観光客も大勢
押しかけ、京都の観光スポットとなっている。時の長さと時代の変化、価値観の変化、そして人々の視覚の慣れ
等々でいかにこのような人工構造物が風景に溶け込むか、その典型がこの水路閣かもしれない。ネーミングにし
う新たな権利が主張されるようになって久しい。景観権も不特定多数の人々の有するものもあれば、マンション
のベランダからの眺めのように個人に属するものもあるが、やはりとりわけ重要なのは不特定多数の人々にある
景観権であろう。特に古都京都での景観の確保は日本そのものの景観の確保といっていい。だがそれも時の変
化によってその価値が変わることもあるという点を留意する必要があるだろう。かつて京都ホテルの建替えにとも
だが市民の声も取り入れていろいろ設計変更もして建設された二つの建物はいまやすっかり京都の新しい景観
として市民の認めるところとなっている。京都駅前の京都タワーなどは建設当時そんな反対運動はなかったよう
に記憶している。寺の街、京都にふさわしくローソクのデザインしたことがよかったのだろう。この駅前の景観でさ
え今やすっかりと定着してしまっている。
そこに住む人々の生活権も確保しながら古都の景観を保存していくことは大変であるが、いったん壊された景観
はもう元に戻すことは不可能であり、また新しい景観が人々に認知されるには半世紀以上の時がかかるというこ
とも考えておく必要があるだろう。ここ十年ばかり京都ではそういう論議はあまり耳に入ってこない。景観権がす
っかり定着したということであろうか。だが計画としてはいろいろあるもののその反対運動を恐れて表面化してい
ないということもある。かつて鴨川の三条と四条の間にもう一つ橋を架けようという計画があった。歩道専用の橋
であり周辺の住民には便利となるが猛反対にあってその後音沙汰はない。四条大橋から上流を眺めれば三条
大橋とその向こうの北山が眺望出来るおなじみの景観に別な橋が視野に飛び込んでくることなど想像もできな
い。今後この計画が改めて持ち上がったとしてもこれだけは断じて認めるわけにはいかない。
一方これはあまり景観権とは関係ないと思われるが、京都駅の西にある梅小路公園に民間企業が水族館を建
設する計画があって、京都市も財政上有力な方策であることから後押しをしようとしている。なぜ内陸の古都に
水族館が必要であるかとの反対意見があるが、一方で子供たちにとっては身近で魚が鑑賞できるようになるの
は教育上素晴らしいとの意見もあり、また市民の反対を恐れて企業の後ろに隠れて矛先をかわそうとする印象
ていくと思われるが、京都市も建設を認めたいのであれば、その是非を市民に説明する必要がある。新しい観光
スポットとなってより多くの観光客が誘致でき、しかも財政の点からもメリットがあるのなら、市民は決して反対は
しないに違いないと思うのだが・・・