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愛読書34「十一番目の志士」

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「十一番目の志士」は長州藩出身で二天一流を使いこなす架空の暗殺者(刺客)天堂晋助の生涯を描いた小説

です。「週刊文春」に1965年10月18日号から1961年11月21日号に掲載されました。1968年にはNETテレビでテレ

ビドラマ化されています。また、1977年のNHK大河ドラマ花神』でも原作の一つとして用いられています。

わたしと「十一番目の志士」

長州藩高家出身の高杉晋作は旅の途中、二天一流を使いこなす天堂晋助と出会います。この男の剣術能力

を見込み、高杉晋作は刺客として活用することにします。

江戸、大坂、京都三都で晋助の刃が暗殺の雨を降らします。そのことに感づいた新選組は晋助の調査に乗り出

し、晋助に許婚の椋梨一蔵を殺された栗屋菊絵もまた、晋助を仇と付け狙います。新選組との戦闘が白熱する

中、新選組副長の土方歳三も自ら戦闘に出て、晋助と刀を交えますが、晋助の心境は戦うにつれて徐々に変化

していきます。主人公かつオリジナルキャラクターである天堂晋助は周防鋳銭村出身で、村厄介なる最下級の

農民の出で、代々宮本伊織から伝来した二天一流兵法を継承した剣術の達人として描かれています。その剣術

の腕を高杉晋作に見込まれ長州藩藩士となり、奇兵隊に入隊します。晋助は京を中心に活動し、新選組に一

目置かれるほどの刺客となります。司馬さんの原作は高杉の死と愛妾おうのの(強制的な)出家で終わっていま

すが、大河ドラマ花神』(演:田中健)では、奇兵隊と共に戊辰戦争で各地を転戦し、最期は箱館で戦死していま

す。

なお、司馬さんの作風は基本的に史実に対して忠実であるため、歴史研究者でさえ実在の人物と思ってしまっ

たといいます。このような人物を創作した理由は、土佐藩薩摩藩には岡田以蔵田中新兵衛など有名な刺客

がいるのに対し、長州藩にはいなかったと考えたためと司馬さんは言っています。架空の人物を実在した人物の

ように縦横無尽に活躍させる、司馬さん得意の物語の世界に読む者を引きづり込んでゆきます。