れ、明治5年(1872)11歳で上京するまでここで過ごした。鴎外がこの旧宅に住んだのは、わずか11年であり、そ
の後再び津和野も、この家も訪れることはなかった。しかし遺書に記された「余ハ石見人森林太郎トシテ死セント
欲ス」という言葉を見ると、彼自身にとって、この家での幼き日々の生活がいかに重要な意味をもっていたか明
らかである。
この旧居は森家の上京後人手に渡り、一時は他所に移築されていたが、昭和29年(1954)鴎外33回忌にあた
り、津和野町がこれを買い戻し、現在地に復元した。この旧居も建築以来130年、老朽化が著しいため、昭和59
年(1984)秋に解体、全面的に修理された。昭和44年(1969)に国の史跡に指定されている。