瀬田川はこの立木観音のある立木山(標高306メートル)の山裾の岩塊を穿ちながら流れ、もう少し
下流に架か
った鹿跳橋の下から立木山の山裾に沿いながら、西に向かって大きく曲がり、
瀬田川から
志津川、
宇治川と名
立木観音はこの立木山の中腹にある。最後の石段を登りきると周囲は突然明るくなり、皐月の空が顔をのぞか
せた。境内はまことに狭い。だが狭いながら本堂も庫裡も、また本堂と庫裡を繋ぐ渡り廊下も、そして御
茶所、い
ずれも素朴であり風情のある建物が狭い境内を囲むようにして建っている。境内の中央にある手水舎も武骨な
がら清々しいたたずまいが漂い、境内は周囲の紅葉の青葉に包まれ、しのぎやすい空間を醸し出していた。