いよいよ稚児の登場である。昔は
長刀鉾以外の鉾にも稚児が乗っていたが現在はすべて人形に代わり生身の
稚児が乗り込む鉾は唯一この
長刀鉾だけである。周囲の人々からどよめきと拍手を受けて稚児は男衆の肩に
乗って鉾に架けられた梯子段を登って行く。梯子段の途中でいったん正面に身体を向けると一段と大きな歓声と
拍手が起こる。鉾に乗り込み正面の位置に立つといよいよ曳き初めである。大勢の人々が太い曳き綱を持って
音頭取りの掛け声を待つ。緊張の瞬間である。
「ヨーイ ヨーイ エンヤラヨー」の掛け声が架かると大きな鉾はいったん巨体が震えるようにきしみ音を立てなが
ら鉾はゆっくりと動き出す。