萬歳楼(瀬田町)の出し物「男の花道」の主役、加賀屋歌右エ門を熱演する小学校五年生杉村祐門君。
女形の歌舞伎役者を演じているが、とても11才の男の子とは思えない台詞回し、演技、所作であり、観客を圧倒
的に魅了していた。
物語のあらすじ
浪速に咲いた花形歌舞伎役者加賀屋歌右エ門は、長年の夢であった江戸の桧舞台中村座の公演が決まり、江
戸に向かう。途中金谷の宿場にて宿をとる。
最近急に視野が悪くなり、大阪で名医と呼ばれる医者からも見放され、三ヶ月で失明すると言い渡される。絶望
のあまり自害しようとするが、同じ宿に泊まり合わせたオランダ帰りの蘭学医土生玄硯に助けられる。大阪の舞
台を観た折に、歌右エ門の目が見えぬことを見破った名医である。玄硯は命をかけて手術を行い蘇らせた。
歌右エ門の謝礼を断り、自分が立派な医者になった時の再開を約し宿を後にする。
三年後、歌右エ門は江戸一番の花形として活躍しているが、玄硯は頑固一徹が禍し未だに貧しく暮らしている。
折りしも旗本武士の座敷に招かれ、余興として踊るよう命ぜられる。自分は医者であり、太鼓持ちではないと断り
、意地の張り合いの末、中村座に出演中の歌右エ門を呼び寄せ替わりに躍らせる。もし来なければ腹を切ると
断言する。果たして歌右エ門は大切な舞台を捨ててこの場に駆けつけるであろうか。窮地の玄硯の運命は・・
八百屋お七が舞台で手紙を読む場面でその手紙を読んで驚き、芝居を中断してその座敷に駆けつけるべく観客
に手をつき、事情を説明するが観客は許してくれない。歌右エ門が手を合わせて何度も懇願すると、観客は過去
の恩義に報いようとする歌右エ門の男気と役者魂に共感して芝居の中断を許す。歌右エ門は駆けつけた座敷で
弦硯との再開を果たし、替わりに当代一の踊りを披露してめでたく幕となる。