伊根町の舟屋集落はなにもかも開放的だ。各舟屋は海に向かって洗濯物を干し、窓や扉は開け放ち、生活
のプライベートな実態を海に向かってさらけ出している感がある。それはとりもなおさず海とともに生き
てきた舟屋の歴史でもあり、なにより海に対してすべてを委ねて安心しきっているといってもいい。とい
いながら伊根湾は外海から奥まった静かな湾というが、これだけ海に向かって開放的な舟屋はしけ等で波
が高いときはどうするのだろうかと他人事ながら心配になってくる。なにはともわれそんな心配事とは関
係なく舟屋には静かに波が打ち寄せ、夏の午後のゆったりとした時間が流れつつあった。