ての見物であり、どの場所からの眺めがいいのかわからず人波に押されて渡月橋の中程までくると、川を渡って
くる風の心地よさに誘われて欄干に持たれて待つことにした。橋の上の人々のざわめきをよそに桂川の流れは
穏やかで、流れの瀬音が夏の夕暮れの涼しさを感じさせる。橋の上から右手川岸の中ノ島公園に目を向ける
と、灯籠流しの会場が準備されていた。灯籠はもっと下流まで流すのかと想像していたのだが、思いの外流す距
離は短いものである。確かにお盆の仏事として灯籠を流すといっても川に異物を流すのに変わりなく、流した灯
籠を確実に回収できるようにしておかないと、世間から批判を受けてしまう。
が架けたとされる。亀山上皇が、橋の上空を移動していく月を眺めて「くまなき月の渡るに似る」と感想を述べた