ゆったりとした山鉾巡行も、車方といわれる鉾の足回りを担当する職人たちは巡行中気が休まるときはない。
てこ棒により大きな車輪の方向を微調整しながら鉾の方向を修正して9トンもある鉾の方向を変える。
「辻回し」と呼ばれる直角に鉾を方向転換される場合が一番大変であり、危険を伴う作業となる。事前に青竹を敷
き詰めその上に鉾の車輪を誘導して、水をかけて車輪の横滑りをし易くして、音頭方と曳き方と呼吸を合わせ
て、一挙に鉾を横滑りさせる。この作業を二、三度繰り返して直角に鉾の方向を転換するのである。時には車輪
の前に身体をさらし、鉾の下にもぐりこむ。鉾が横滑りするときには釘を一本も使わず全て荒縄で組み上げた鉾
は大きく揺れ、しなり、木のきしむ音が聞こえる。
決して目立たないようで目立つ車方の仕事はまさに男の仕事である。
