京都で一番京都らしい風情とか、情緒のあるスポットといえば、上賀茂神社の東に広がる社家辺りではあるまい
く、特に大きな神社ともなると数多くの社家住宅が建ち並び、社家町が形成されていた。現在、上賀茂にはこの
ような社家住宅がおよそ20軒残っている。しかし、江戸時代には300軒を越える社家があったという。
上賀茂の社家町は、明神川と呼ばれる小川に沿って続いている。さらさらと流れるせせらぎの中、社家邸宅の門
や土塀、小橋が連なる光景は風情満点である。この印象的な町並みの中心を担う明神川は、上賀茂神社の境
内を流れる「ならの小川」から注いでいるもの。「ならの小川」は百人一首にも詠まれ、祭事の際には禊や人形流
しが行われる、いわば神水の川。それが神社の境内から出ると「明神川」と名を変え、社家町を潤しているので
ある。明神川沿いに建ち並ぶ社家住宅では、それぞれの家の敷地内に明神川の水を引き込み、生活用水や庭
園の遣水、そして身を清める禊の水として利用してきた。
上賀茂の社家町は昔ながらの社家住宅が連なる町並みとして国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され
ている。しかも全国で唯一「社家町」という名目での選定を受けている。