ての桜は「清水(しょうず)の桜」である。
海津のまちはずれの墓地の中に一本大きくそびえ、樹齢300年以上といわれる巨桜「清水の桜」は、アズマヒガ
ンザクラと呼ばれる種類の桜で、高さ16メートル、幹の周囲6.4メートルの滋賀県自然記念物にも指定されている
県下最大級の桜である。この桜がこの地に根付いたころ、桜の前には北国北陸からの物資を京や大阪に運ぶ
「七里半越」と呼ばれる山越えの道が通っており、数多くの荷駄や人々が海津から追坂峠道を通って、敦賀津へ
出るこの七里半越で目的地へ向かっていった。のちにこの桜が成長するにつれ海津の街も姿を変え、当時の隆
盛を偲ぶ物も減ってきたが、この桜は人々の暮らしと海津の街の変化を見守りながら、現在でも四月の上旬に
主前田侯が上洛の折、その美しさに見とれ何度も振り返り眺めたことから「見返りの桜」ともいわれており、春に
はこの桜を目当てに多くの人々が訪れる。