音羽の滝の前を過ぎてしばらくゆくと右手に「子安の塔」に通ずる坂道がある。子安の塔からの眺めは京都に中
での屈指の眺めではあるまいか。2009年から始まった修復工事も2012年の秋には工事が完了し、永らく見せて
いなかった三重の塔も美しい朱色の雅な姿を見せている。もともと子安の塔は清水寺の仁王門の門前にあっ
た。清水門前に通じる「産寧坂(さんねいざか)」は、文字通り泰産寺・子安の塔に通じる安産祈願の道であっ
た。1911年、子安の塔と泰産寺は現在地に移転してしまったので「産寧坂」の名前だけが現在も残っている。復
工事は、解体・再組立という方法が取られた。すべての木材がバラバラにされ、必要に応じて修復された工法で
ある。この際、もとの木材は出来る限り残す形が取られたという。向かいの見える清水の塔が西に傾いた秋の陽
を浴びて、炎が燃え上がるようにそびえていた。