城下町を散策しているとなにやら右手方向の上空が明るい。その明るさに惹かれて歩いてゆくと、古い土塀の間
の視界が突然開き、眼前に穏やかな波が寄せる砂浜が広がっていた。菊ヶ浜である。左手には指月山がゆった
りとその姿を見せていた。城下町の風情が濃厚に残された町の土塀のすぐ後ろに砂浜が広がる城下町など他
にはないのではあるまいか。夏になると市民の海水泳場として賑わう砂浜と同じ風景をかつて幕末の志士たち
が眺めたであろうことを思い、その感慨にふけりながらしばし砂浜で立ち尽くすのであった。本当ならこの砂浜を
たどって萩城跡のある指月公園まで行きたいところであったが、時間がなく残念ながら足早に町中に戻る。