京都左京区、京大のある吉田山は小さな山で登り口はいろいろあるが、銀閣寺道から南に延びる神楽岡通
りを少し南下すると山への登り口の石段がある。しばらく登っていくと一帯は神楽岡町といい、明治、大
正時代にタイムスリップしたような家並みが広がる。勝手な想像をすれば、かつて戦前の時代旧制三高の
先生たちが住んでいたような雰囲気がある。休日の午後、教え子の学生たちが弊衣破帽の姿で先生を訪ね
てくる。暖かく迎える先生に議論を吹っかけ、その実、先生の美しい一人娘の顔を見に来る。
そこの民家の二階からは談笑する学生たちの声が聞こえ、そこの露地からは手ぬぐいを腰にぶら下げマン
トをひるがえして学生が姿を見せる。そんな雰囲気が濃厚に漂ってくる一角である。
吉田山の頂上の広場には三高寮歌を偲んだ歌碑が建てられている。