京・近江の写真 春夏秋冬

京、近江四季折々の自然の風景とそこに住む人々、祭り、伝統芸能の写真

二月堂お水取り「修二会」大松明その2

定刻の七時になるとお堂を照らしていた照明が一斉に消えた。お堂の姿が雪洞の淡い光にうっすらと浮かび上がった。

東大寺二月堂の修二会(しゅにえ)は、天平勝宝4年(752)、東大寺開山良弁僧正の高弟、実忠和尚が創始された。以来、令和6年(2024)には1273回を数える。12月16日(良弁僧正の命日)の朝、翌年の修二会を勤める練行衆と呼ばれる11名の僧侶が発表され、明けて2月20日より別火(べっか)と呼ばれる前行が始まり、3月1日からの本行に備える。そして3月1日から14日まで、二七ヶ日夜(二週間)の間、二月堂において修二会の本行が勤められる。

お堂の左手の屋根付きの階段の辺りで突然漆黒の闇を貫いて大きな炎が周囲を照らし出した。点火された松明の炎である。松明は階段を勢いよく駆け上がってゆく。世話係りの童子と呼ばれる人々が松明を担いで駆け上ってゆくのである。松明はもともとは道明かりに過ぎなかったのが、どんどん大きくなり、今の形になった。竹の軸に杉の葉をさして、童子自ら作る。1~11日と13・14日の通常の松明は、長さ約6m、重さは60kg、12日の籠松明は長さ8m、重さ80kgにもなるという。松明は二月堂の回廊から大きく突き出され、松明が激しく回されて火の粉が辺りを照らしながら降り注がれる。お堂の下にいる人々は火の粉を浴びて無病息災を願い、落ちた杉の葉は競うように拾われる。この松明が十本、次から次と階段を駆け上がり回廊を左から右に向けて移動すると炎が激しく滝のように回廊下に降り注ぐ。