京・近江の写真 春夏秋冬

京、近江四季折々の自然の風景とそこに住む人々、祭り、伝統芸能の写真

日野城址のさくらその1

      

      

近江鉄道日野駅の東約4.5kmにある日野川ダムのそばにある日野城址は蒲生氏の居城跡である。中野城ともいう。築城以前の蒲生氏の城は、音羽丘陵上にあったが、蒲生定秀により戦国時代に日野城が築かれた。築城にあたっては、既存の日野市街を城下町とし、城のある西大路付近を武家屋敷地帯、日野市街を町屋敷地帯としたという。明智光秀の謀反によって殺された織田信長の妻子が、身を寄せたのは日野城である。蒲生氏郷はこの城で生まれ、若くして戦国武将の器量を備えていたので、豊臣秀吉に抜擢されて伊勢松ヶ島12万石の領主となって日野城を去った。天正12年(1584)氏郷が伊 勢に転封したあとは使用されず、元和6年(1620)に仁正寺藩2万石の大名として入封した市橋家も藩邸を城の外側に築いたため、日野城が再び城として使われることはなかった。近の農民が開墾して城内はすっかり姿を変えた。城の遺構は、日野川ダムの建設により、現在ではほとんど見ることができないが、現在ダム北畔に本丸跡や土塁の一部、井戸跡が少し残っているほか、土塁上には市橋家ゆかりの神社が残っている。ダムの周囲の、今を盛りと咲く桜の風景の中にひっそりとある日野城址はまさに「夏草や兵どもが夢の跡」である。